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相続した後で不動産売却する場合の注意点は?名義・期限・媒介契約を解説

相続した後で不動産売却する場合の注意点は?名義・期限・媒介契約を解説

親などから不動産を相続したとしても、住む予定がない場合にはコストがかさみ悩みの種となることもあります。
そのような場合には、所有し続けるのではなく、不動産売却を考えるのがおすすめです。
そこで今回は、相続後におこなう不動産売却の注意点として、名義・売却期限・媒介契約について解説します。

相続後におこなう不動産売却の注意点①:名義

相続後におこなう不動産売却の注意点①名義

相続した不動産の売却における最初の注意点となるのが、不動産の名義についてです。
相続後の不動産売却では、不動産名義をどのようにする必要があるか、具体的にチェックしましょう。

名義変更は必要?

不動産を相続した方のなかには、相続した不動産の名義変更は不要だと耳にされたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、相続した場合の不動産の名義変更については、2024年4月から義務化されているため、相続後には名義変更が必要となることが注意点です。
名義変更が義務化された背景には、名義変更をしなかったために、所有者が不明になってしまった土地が社会問題になっていることが挙げられます。
また、この義務化がなかったとしても、亡くなった方の名義では売却が不可能であることから、いずれにしても相続後の名義変更は必要です。

複数人で相続した不動産は?

亡くなった親が不動産を所有していた場合、兄弟姉妹など複数の相続人で、どのように分配すれば良いか迷うことがあります。
不動産の名義の観点から考えると、兄弟姉妹のうち誰か1人の名義とするか、全員の共有名義にするかの2択となるのが一般的です。
誰か1人が不動産を相続したことにより、不平等な状態となるのであれば、不動産を相続した方がほかの相続人にお金を支払う代償分割などの方法があります。
また、名義変更内容の決定方法としては、法定持分に沿って共有名義とする法定相続・遺言による分割・遺産分割協議による分割があります。
相続税の納付期限は、相続開始を知った日から10か月なので、早めに不動産の名義変更を済ませて納税しなくてはなりません。

名義変更の手続き方法

名義変更とは、相続した不動産の所有権が移転した事実を法務局に届けたうえで、登録内容を変更することを指します。
申請先となる法務局は、相続した方が住む地域の法務局ではなく、相続した不動産がある地域の法務局です。
名義変更である相続登記の申請には、所有権移転の登記申請書が必要です。
また、誰が不動産を相続したかといった話し合いの内容が記載された遺産分割協議書も必要になります。
さらに、印鑑証明書・亡くなった方の戸籍謄本・相続人全員の戸籍謄本なども必要書類です。
このほかに、亡くなった方の住民票の写し・固定資産評価証明書・相続関係の説明図なども準備しましょう。
遺産分割協議書の作成から相続登記の手続きまでが困難に感じたら、専門家である司法書士への依頼を検討することも注意点です。

相続後におこなう不動産売却の注意点②:売却期限

相続後におこなう不動産売却の注意点②売却期限

相続した不動産の名義変更を済ませたら、いつでも不動産売却が可能な状態になります。
自分が育った実家であれば、手放すことが心苦しいかもしれませんが、有利な制度を利用するためには、売却期限があることには注意しましょう。

相続税の取得費加算の特例の期限内に売却する

相続した不動産を売却するなら、節税につながる特例が利用できる期間内に売却するのがおすすめです。
具体的には、相続税の取得費加算の特例の適用が節税ポイントで、この特例の適用には期限があります。
この相続税の取得費加算の特例が特例される不動産売却期限は3年以内です。
具体的には、相続が開始した日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以降3年が経過するまでに売却した不動産に対して特例が適用されます。
相続開始から相続税の申告期限までは10か月間であることから、相続開始から特例の売却期限は3年10か月以内となります。

相続税の取得費加算の特例とは

相続税の取得費加算の特例とは、相続税として納めた金額について、不動産売却時のコストである経費に含められるものです。
不動産の売却で得た利益に対しては、譲渡所得税が課せられるため、経費を多く計上できれば、その分だけ課税対象額を減らして節税につながります。
相続税の取得費加算の特例を適用するには、相続や遺贈で不動産を取得した方であることや、相続税が課せられていることなどが挙げられます。

相続空き家の3,000万円特別控除が利用できる期限内に売却する

相続税の取得費加算の特例のほかにも、相続で利用できる特例があります。
相続空き家の3,000万円特別控除を利用する場合、譲渡所得から3,000万円が控除されます。
こちらの特例を利用するのであれば、売却期限は相続の開始日以降3年が経過する日の年の年末です。
この特例を適用するには、昭和56年5月31日以前に建てられた住宅であることや、マンション以外の家屋であることなどの条件を満たす必要があります。
さらに、家屋をそのままにして売却する場合は、耐震基準を満たす必要があることから、耐震基準を満たさないのであれば、取り壊しか耐震リフォームが必要になることは注意点です。

相続後におこなう不動産売却の注意点③:媒介契約

相続後におこなう不動産売却の注意点③媒介契約

名義変更を済ませて、売却期限内の不動産売却活動開始の目途が立ったら、次におこなうのは信頼できる不動産会社との媒介契約締結です。
この媒介契約には3つの種類がありますので、それぞれの内容・違い・注意点についてチェックしましょう。

一般媒介契約

3種類の媒介契約のうち、売主の自由度が高いものが一般媒介契約です。
ほかの2種類は、1つの不動産会社としか契約できませんが、この一般媒介契約は同時にいくつかの不動産会社と契約できる自由度に特徴があります。
ただし、ほかの2種類と比較して、売却活動にあたってのサポートが少なくなることはデメリットです。
一般媒介契約の場合、不動産会社から売主への進捗状況報告の義務はなく、どのように不動産売却活動が展開されているかわかりにくくなります。
したがって、一般媒介契約を選ぶ場合には買主が見つかるまで時間がかかりやすくなることが注意点です。

専任媒介契約

専任媒介契約は、1つの不動産会社のみと契約を結べるもので、一般媒介契約のように複数の不動産会社と同時に契約することはできません。
しかし、不動産会社ではなく自分で買主を見つける自由があり、こうした買主との間では、不動産会社を経由せずに売買契約の締結が可能です。
また、一般媒介契約では不動産会社からのサポートが少ない一方で、こちらの専任媒介契約は2週間に1度以上の進捗状況報告が義務付けられています。
この専任媒介契約は、自分で買主を探せる可能性が高いものの、より良い条件での不動産売却を目指す方におすすめです。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、3種類の媒介契約のなかでも手厚いフォローが受けられるものです。
専属専任媒介契約では、1週間に1度の進捗状況報告が義務付けられているため、タイムリーな現状把握が可能となります。
もちろん、独占契約になることから、不動産会社が優先して買主を見つけてくれることもメリットです。
ただし、1つの不動産会社のみとの契約となるのはもちろんのこと、自分で買主を見つけた場合でも、不動産会社をとおさなくては売買契約を結べないことは注意点となります。
自力で買主を見つける手段がない方だけでなく、自分で買主を探せる場合であっても、売買契約に不動産会社のサポートを必要としている方には、この専属専任媒介契約がおすすめです。

まとめ

相続後の不動産売却では、遺産分割協議などをおこなったうえで、名義変更をしなければならないことが注意点です。
また、相続税の取得費加算の特例や相続空き家の3,000万円特別控除を利用するのであれば、おおよそ3年以内が不動産売却期限となることも注意点となります。
3種類の媒介契約を選ぶ場合の注意点もチェックして、相続や不動産売却を進めてみてください。