相続放棄は自分でできる?手続きの流れや必要書類・注意点についてご紹介

相続放棄は自分でできる?手続きの流れや必要書類・注意点についてご紹介

不動産などの財産を相続する予定がある方のなかには、さまざまな理由により「相続放棄」を考えている方もいると思います。
しかし、相続放棄はどのような流れでやれば良いのか、自分でもできるのか、不安に感じているかもしれません。
今回は、相続放棄は自分でできるのか、相続放棄を自分でやる手続きの流れや必要書類、注意点についてご紹介します。

自分で相続放棄の手続きをするときの流れ

自分で相続放棄の手続きをするときの流れ

相続放棄の手続きを自分でできるか判断するためには、まず相続放棄の手続きの流れを知る必要があります。
ここからは、自分で相続放棄の手続きをするときの流れについてご紹介します。

相続財産を調査して必要書類を集める

自分で相続放棄の手続きをおこなうには、まず相続財産がどのくらいあるのか調査します。
自宅の金庫やタンスを調べて現金・預貯金の確認をおこない、また契約書や郵便物をチェックして株式・生命保険といった有価証券の確認をしましょう。
不動産に関しては、固定資産税通知書や名寄帳で確認できます。
借金やカードローンなどの負債については、通帳から定期的な支払いがあるか確認すると良いでしょう。
次の流れでは、相続が開始した土地を管轄する家庭裁判所を確認します。
相続が開始した土地はおもに被相続人の住所ですが、よくわからないときは家庭裁判所に管轄しているかを確認しておきましょう。
さらに、戸籍謄本などの必要書類を集めます。
必要書類は、被相続人との関係によって異なるため、しっかり確認しておきましょう。
ほかにも、手数料などとして収入印紙800円分と、家庭裁判所からの連絡費用として郵便切手350円~500円分程度が必要です。

相続放棄申述書を提出する

必要書類が揃ったら「相続放棄申述書」を作成します。
相続放棄申述書の書式は、裁判所のホームページからダウンロードが可能です。
申述書は2ページあるので、必要な箇所に記載をしましょう。
記載が終わったら、相続放棄申述書と必要書類一式を、管轄の家庭裁判所に郵送または持参で提出します。

3か月以内に手続きをおこなう

相続放棄の手続きは、相続の開始を知ってから3か月以内におこなう必要があります。
もし3か月以内に相続放棄の手続きをしなかったら、単純承認をしたとみなされて、相続財産をすべて受け継ぐことになるので注意が必要です。
しかし、3か月の短い期間で、自分で相続放棄の判断や手続きを完了するのが難しいときは、期間の延長が認められるケースがあります。
たとえば、財産調査に時間がかかるなど、3か月以内に相続放棄の判断ができそうになかったら、家庭裁判所に延長の申請をおこないましょう。
延長申請には、申立書、被相続人の住民票除票、関係を証明する資料などが必要です。

自分で相続放棄の手続きをするときの必要書類

自分で相続放棄の手続きをするときの必要書類

相続放棄の手続きをするときの必要書類は、第一順位相続人、第二順位相続人、第三順位相続人のだれが手続きするかによって異なります。
ここからは、自分で相続放棄の手続きをするとき、それぞれの方が準備する必要書類についてご紹介します。

第一順位相続人の必要書類

第一順位相続人とは被相続人の子どもで、もし子どもが亡くなっているときは孫となります。
第一順位相続人が相続放棄手続きをおこなうときに必要な書類は、以下のとおりです。

●相続放棄の申述書
●被相続人の住民票除票または戸籍附票
●申述人の戸籍謄本
●被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


もし、孫やひ孫が放棄する方であれば、本来の相続人の死亡の記載がある戸籍謄本も必要です。

第二順位相続人の必要書類

第二順位相続人とは被相続人の親で、もし親が死亡しているときは祖父母となります。
第二順位相続人が相続放棄手続きをおこなうときに必要な書類は、以下のとおりです。

●相続放棄の申述書
●被相続人の住民票除票または戸籍附票
●申述人の戸籍謄本
●被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


もし、被相続人の子およびその代襲者で死亡している方がいるときは、その子のすべての戸籍謄本が必要となります。
また、被相続人の直系尊属に死亡している方がいるときは、その直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本も必要です。

第三順位相続人の必要書類

第三順位相続人とは被相続人の兄弟姉妹で、もし死亡しているときは甥・姪となります。
第三順位相続人が相続放棄手続きをおこなうときに必要な書類は、以下のとおりです。

●相続放棄の申述書
●被相続人の住民票除票または戸籍附票
●申述人の戸籍謄本
●被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
●被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


もし、被相続人の子で死亡している方がいるときは、その子のすべての戸籍謄本も必要です。
また、申述人が代襲相続人であるときは、被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本も用意しましょう。

自分で相続放棄の手続きをするときの注意点

自分で相続放棄の手続きをするときの注意点

自分で相続放棄の手続きをするときには、いくつか気を付けておきたい注意点があるので、知っておくとスムーズな手続きが可能です。
ここからは、自分で相続放棄の手続きをするときの注意点についてご紹介します。

書類に不備があると却下されるケースがある

相続放棄申述書などの書類に不備があると、相続放棄が却下されるケースがあるのは注意点のひとつです。
提出書類に不備があったり、必要書類が足りなかったりすると、家庭裁判所から連絡がありますが、それに対応せずに放置しておくと、相続放棄が却下されるおそれがあります。
もし却下されても再申請をするのは可能ですが、一度却下されてしまうと、再申請が受理されにくいかもしれません。
一度目の相続放棄の申述での経緯によっては、受理が見込めないケースもあるため、書類の不備などの連絡があったときは、すみやかに対応するようにしましょう。

相続財産を処分すると相続放棄ができない

相続放棄を考えている方は、相続財産を処分しないようにすることが注意点です。
もし相続財産を処分してしまうと、単純承認をしたとみなされてしまい、相続放棄ができなくなる可能性があります。
単純承認とは「相続財産をすべて相続する」手続きで、民法第921条によると、単純承認が認定される事由のひとつが「処分行為」です。
相続放棄をする方がやってはいけない行為には、以下のようなものがあります。

●相続財産の売却や譲渡
●相続財産の担保としての提供
●相続財産に関する契約の変更や解除
●相続財産の一部を使用しての新たな事業や投資
●相続財産の破壊や廃棄


相続放棄を考えているなら、単純承認とみなされないために、処分行為は避けるようにしましょう。

占有している不動産の管理義務は残る

相続放棄の手続きをするときの注意点として、相続放棄をしても、占有している不動産の管理義務は残る点があります。
2023年4月から施行された改正民法により、相続の放棄をしたときに、相続財産を現に占有しているときは、相続財産の清算人に引き渡すまでの間、財産の管理義務が残ることになりました。
現に占有している状態とは、事実上支配や管理をしている状態を指し、例として被相続人の自宅に暮らしている相続人は、相続財産である自宅を相続放棄後も管理しなければなりません。
このようにさまざまな注意点があるため、もし自分で手続きをおこなうのが不安なときは、専門家に依頼するのもひとつの方法です。

まとめ

自分で相続放棄の手続きをする流れでは、相続財産がどのくらいあるか調査して、必要書類を揃え、管轄の家庭裁判所に提出します。
必要書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票などがあり、だれが相続放棄するかによって種類は異なります。
自分で相続放棄の手続きをするときは、書類に不備があると却下される、相続財産を処分すると相続放棄ができない、占有している不動産の管理義務が残る点に注意が必要です。